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高校生に人気のオート

飛行場からのアクセスは、レンタカーか、ホテルのリムジンバスしかない。
出口にホテルの係員が待機していてくれ、すぐにリムジンの手配をしてくれた。
十人ほど乗れるリムジンにわれわれ夫婦の他、アメリカ人らしい夫婦が一組乗りあわせた。
オルビアの街はイタリアのどこにでもあるような街と何ら変わりがなかったが、街からリムジンが抜け出すと風景は一変、機上から眺めたと同じ景色の中を走りはじめた。
褐色といってもよく見ると、やはり、牧草地帯である。
ただし、道路はちゃんと舗装されている。
サルデーニャ島は一九六〇年代になってはじめてリゾート開発された土地で、八〇年代に入って、注目を集めはじめた。
それまで南仏のコートーダジュールなどでバカンスを過ごしていた世界の富豪たちがつぎつぎに別荘を建てはじめ、最高級リゾートーホテルに観光客がやってくるようになった。
それを仕掛けたのが、実業家で大富豪のアガーカーンである。
かれは、サルデーニャ北東部のエメラルド海岸に目をつけ、この風光明媚な海岸線のあちこちにリゾートーホテルを建てた。
その一角の土地の名前をそのままつけて建てられたのが、「カラーディーヴォルペ」である。
オルビア空港から約三十分でホテルに到着した。
ホテルといっても二階建ての赤土で出来たコテージ風で、イタリアというよりスペインの匂いが漂う感じである。
簡単なチェックーインの手続きをすませて、客室へ案内される。
部屋は白の漆喰の壁に淡いグリーンのタイルが床に敷きつめてある。
その白い壁には、本や燭台、それにイタリア古典喜劇に登場する道化アルレッキーノがだまし絵のように描かれ、それによくマッチしたベッドや木製のライティングービューローなどが置かれている。
これだけで十分にリゾート気分になってしまう。
そして、大きなガラス扉を開けてバルコニーへ出ると、小さな入り江が見え、モーターボートが停泊していた。
部屋にじっとしていてもつまらない。
早速、ホテルの探検に出かけよう。
一階のロビーを抜けて入り江に出ると、その横にスイミングプールがあり、泊まり客たちがプールサイドで日光浴をしていた。
それを見て、わたしたちはすぐさま部屋へ引き返し、水着に着替えて出直した。
プールで泳ぐ者、デッキチェアに寝そべってぶ厚い本を読み耽る者、身体に太陽を浴びて日光浴する者、はたまた、テラスのパラソルの下でおしゃべりに興じている者と、午後の時間の過ごし方はそれぞれだが、その時間のなんと優稚なことか。
そして、ときたま聴こえてくるのは、入り江に出入りするモーターボートの音ぐらいである。
イタリアの真夏の太陽は、気が遠くなるほどになかなか沈まない。
デッキチェアに寝そべって本を読みだしたわたしも、いつしか本を持つ于が重くなり、しだいにまどろみ、午睡をむさぼった。
目が覚めて時計を見ると夕方の六時、日はまだまだ高いのだが、さきほどまでの賑わいが嘘のように、プールサイドからかなりの人影が消えていた。
白シャツ白パンツのホテルの従業員がデッキチェアの後片づけをはじめている。
わたしたちも、そろそろ部屋へ引き上げることにした。
部屋に戻ってシャワーを浴び、改めて散歩に出かけた。
といっても、ホテルの周辺はなにもなし、人っ子ひとりいない。
言ってみれば、牧草地帯の一角にホテルがたった一軒ポツンと建っているだけなのだ。
買物も食事もオルビアまで出かけなくてはならない。
それゆえ、ホテルへはフルペンションで泊まることになる。
フルペンションというのは、宿泊のほかに三食付きということで、昼食か夕食が抜けるとハーフペンションとなる。
つまり、この「カラーディーヴォルペ」に泊まった客たちは、滞在中、ホテルから一歩も外へ出ないというわけである。
外出する必要がないほどに、ホテルにはブティックから美容院まで揃っていて、至れり尽くせりである。
ホテルの中を散策してロビーまで戻ると、大きな窓ごしに外のテラスでくつろぐ客たちが見えた。
近づいて見ると、ホテルの建物を背にして、それぞれが入り江のほうを眺めている。
アペリティーヴォ(食前酒)を飲みながら海のかなたへ沈む夕日を眺めようというわけだ。
早速、わたしたちもそれに加わった。
目のまえの入り江にはモーターボートが停泊しているが、そのほかは人工的なものがなにもなく、ホテルの周囲も未開発の自然のままである。
入り江を囲む一帯がすべてホテルの敷地ということで、これ以上、景色が変わることがないらしい。
なんという贅沢!わたしたちはカンパリソーダを飲みながら、夕日のドラマを堪能した。
そろそろ夕食の時間である。
部屋へ戻りジャケットを着こんで、一階の食堂へと降りていった。
リゾートとはいえ、夕食時にはジャケットを着ていったほうがよいと思ったわけなのだが、食堂に近づくと、どうだろう、やってくる男女が全員着飾っているではないか。
男性はタキシードに蝶ネクタイの人までいる。
これはとんでもないことになったと、わたしたちは慌てて部屋へ引き返した。
あらためて食堂へ出かけてゆくと、もうすでにかなりの賑わいだった。
客室は百二十室あまりだが、そのほとんどの客たちがここで夕食をとるわけだから、賑やかになるのも当然である。
案内されたテーブルに着いて、サービス係から説明を受ける。
アンティパストは、ブッフエで各自好きなものを好きなだけどうぞと言う。
魚料理にすずき、肉料理に牛タンの煮込みを選んで注文し、席を立った。
ブッフエには、生ハム、サラ`ミーソーセージから色とりどりの野菜のマリネ、それにパスタまで並んでいる。
まずは、生ハムとサラミを皿にのせ、テーブルへ戻った。
薄切りゆえに生ハムの脂肪が舌の上で甘く溶け、サラミの香りも食欲をくすぐるものだった。
お替わりしたいところだが、また明日の晩もあることだしと、パスタに移ることにした。
パスタといっても、スパゲッティなどはのびてしまうため置いていない。
その中から、わたしはパスタと豆のスープ煮を選んだ。
これがまた素朴な昧で、とくに豆のおいしいこと。
これだけをおなかいっぱい食べたいくらいである。
このあとに、すずきのムースと牛タンの煮込みを食べ、さらに、ペコリーノというサルデーニャ特産の羊乳からつくるチーズをいただき、デザートにメロンのシャーベットとティラミスをとると、さすがに満腹となった。
グラス一杯のスプマンテ(イタリア製のシャンパン)のあとに飲んだサルデーユヤ産の名もない赤ワインもおいしかった。
濃いエスプレッソーコーヒーを飲んで引き上げることにした。
だが、食堂の賑わいはいっこうに衰える様子を見せない。
翌朝、ゆっくり目が覚めた。
音がなにもしない。
ベランダの長椅子に寝そべり、本の続きを読みけじめ、おなかがすいてきた頃あいを見計らって、プールサイドのテラスへ朝食をとりに下りていった。
しぼりたてのオレンジジュースは香り高く、その鮮やかなオレンジ色が青空によく映える。
野菜にハムにチーズとメニューは盛り沢山だが、クロワッサンとカプチーノだけですませた。
プールサイドに人が集まりはじめた。
わたしたちもまた、水着に着替えてくることにしよう。
プールのすぐ横はもう海なのだが、そこでは誰も泳がない。
ホテルのモーターボートに乗り込んで十分ほど走ったところにプライヴェートビーチかおり、そこで泳ぐことができる。

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